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- ドクターズインタビュー(心臓リハビリテーション編)
心臓リハビリテーションに関心を持った
きっかけを教えてください
循環器専門医として病院で働いている際に、手術後のはずなのに十分動けずに困っている患者さんを目にする機会が多かったのです。従来のカテーテル治療や外科手術、あるいは薬による心臓治療では弱った筋力には介入できないからです。ところが最近このような患者さんに対する心臓リハビリテーションの有効性がどんどん明らかになってきました。心臓リハビリテーションは運動療法を中心としたプログラムですが、患者さんの安全と運動効果を両立するために緻密そして科学的に運動強度が設定されています。そのため専門施設でないと受けることができません。
この心臓リハビリテーションをもっと活用すれば動けずに困っている患者さんを減らすことができるのではないか、少し大げさに表現すれば循環器疾患領域で残された課題を1つ解決できるのではないか、そのように考えるようになりました。
開業医として心臓リハビリテーションに
取り組み始めたきっかをお話しください
一言で表すとご縁です。心臓リハビリテーションは私一人では到底できません。運動が可能な十分なスペースと国家資格保持者である理学療法士を初めとした優れた専門スタッフが欠かせないのです。重要性が認識されているにも関わらず心臓リハビリテーション実施施設が少ない原因は、スペースとマンパワー確保の難しさもあるのでしょう。幸運にも広いスペースを持つテラスマクリニックモールへの入居を誘っていただき、同時に優秀なスタッフ達が集まってくれました。このようなご縁を活かして、父の羽渓(はたに)医院時代からお世話になっている須磨エリアの方々に心臓リハビリテーションを役立てていただこうと考えました。
心臓リハビリテーションのメリットを
教えてください
生存寿命ではなく健康寿命を創り出す治療、それが心臓リハビリテーションです。患者さんが勇気を出して心臓の手術を受けた、先生も一生懸命に頑張って手術は成功した、でも満足に動くことができない…。そのような患者さんが明るく元気に生活するお手伝いをするのが心臓リハビリテーションです。具体的には、心不全患者さんが心臓リハビリテーションを受けると再入院が減少することや、死亡率が減少することが明らかになっています。
もちろん効果には個人差がありますし、同じ病状であっても年齢が進むと回復が難しいこともあるでしょう。でも今よりももう少し活動的に暮らすことができる、あるいは同年代と同じくらいの日常生活を送ることができようになる、そのようなメリットが心臓リハビリテーションには期待できます。
自由に活動できる幅が広がるって
素晴らしいですね
もちろんです!これはもう実感していただくしかないのですが…。これまでできなかったことがほんの少しでも自分でできるようになる、あるいはご家族の手を煩わさずに一人だけで動く範囲がちょっとでも増えると患者さんはとても喜ばれます。その様な患者さんは来院される度に表情も活き活きとされるので、私たちもお会いするのが楽しみになるのですよ。また介護を担当されているご家族への影響も見逃せません。もちろんリハビリテーション終了時の活動度に個人差はあります。それでも患者さんが自分への自信と生きる勇気を取り戻した結果、ご家族から「早く死にたいといっていたおばあちゃんに活気が出た」「家の中が明るくなった」と伺うと、本当に心臓リハビリテーションをして良かったと実感しますね。
心臓リハビリテーションを利用するためには
紹介状が必要ですか?
いいえ、必ずしもそんなことはありません。現在クリニックで心臓リハビリテーションを受けている方の多くは次のどちらかです。
・他施設で既に始めていた心臓リハビリテーションの継続
この場合は、心臓リハビリテーションに関する紹介状を患者さんはお持ちになります。
・はたにクリニックに定期通院する中で新たに心臓リハビリテーションを開始
この場合、心臓リハビリテーションに関する紹介状は持っておられません。開始するきっかけは、こちらから「やってみる?」と勧める場合や、通院される中で「私もやってみたい!」と自ら希望されるケースなどさまざまあります。
心臓が悪いのに運動をしても
大丈夫なのですか?
大切なポイントは心臓リハビリテーションで行う運動強度は患者さんごとに細かく設定されていることです。心臓リハビリテーションを受ける方は全員が何らかのご病気をお持ちです。そのため安全性の確保と筋力や全身状態改善のために有効な運動強度、この2点の両立が欠かせません。患者さんにはまずCPXというマスクを装着して自転車エルゴメーターを漕ぐ検査を受けていただきます。CPX(心肺運動負荷試験)をすると有酸素運動から無酸素運動に切り替わる直前のポイントが正確にわかります。CPXで得られたデータを元に患者さんの状態に応じた適切な負荷をかけた運動を行います。
さらに運動中はリハビリテーションスタッフ(理学療法士含む)が付き添い、患者さんには心電図モニターをつけてもらいながら行うので早期に異常を発見できます。このように持病がある方でも安心、安全に運動を行うのが心臓リハビリテーションです。
運動は苦手なのですが...
大丈夫ですよ。実はそのようにおっしゃる方は珍しくありません。心臓リハビリテーションで使うフィットネスバイクは負荷を患者さんの状態に応じて細かく調整できます。負荷をゼロにすることも可能ですので、安心してください。また心臓リハビリテーション中は理学療法士が付き添い、安全確認はもちろん、お声をおかけして患者さんの頑張りをサポートさせていただきます。心臓リハビリテーションは理想的には週に3回、最低でも週に2回は行った方が良いでしょう。また、ご自身のやる気は欠かせません。自分はどうなりたいのか?どの程度動けるようになりたいのか?やる気があるのであれば、どんなに運動が苦手な方であっても私たちは全力でお手伝いさせていただきます。
最後に一言お願いします
心臓リハビリテーションは病気で弱った体を元気にする治療手段の1つです。手術は上手く成功したと先生にいわれているのに元通りに体を動かせなくて困っている方、もう少しだけでも活動範囲を広げたい方、ぜひ私たちにご相談ください。私たちと一緒に以前のように散歩や山登りができる体を取り戻しましょう。